カテゴリー「2008年読書禄(1)」の5件の投稿

2008年12月22日 (月)

夜のピクニック

外を歩くのが好きなのに、引きこもるのも好きで、「出家したい」が口癖の矛盾書店員より借りた。


この本は、主人公二人の視点が切り替わりながら進んでいく。その二人は融(とおる)と貴子。二人とも高校三年生である(幻の10代)。
この二人が通う学校では、修学旅行が無い。では、何をしているか。
一年に一回歩くイベントがあるのだ。

このイベントが物語りの芯をなしている。
それは、高校3年にとって、最後の学校のイベントの日でもある。
歩く行程は3種類あり、毎年変化する。スタート地点、ゴール地点が「学校」の年もあれば、「学校」でない年もある。今回は学校がスタート地点で、学校がゴール地点のお話。

一日目、朝学校に集合し、1~3年まで各クラス毎に固まって歩き始める、団体歩行である。
一時間毎に10分間休憩、というサイクルを深夜2時まで繰り返す。
その後二時間睡眠をし、まだ夜が明ける前に、二日目の自由歩行が始まる。
あらかじめ、イベント前に一緒に行く人を決めておいて、それぞれが思い出つくりをする。

一日目、二日目ともに20km。二日目はルールがあり、制限時間が5時間と決まっているため、開始後ある程度走って距離をかせいでおかなければならない。5時間を制限時間とし、ゴールは閉まる。ゴールに到達できず、道中に残っている者はバスに乗せられ、ゴールまで運ばれてしまう。3年生にとって、躍起になって、それだけは避けたい!と願うイベントである。

「歩く」という日常の行為を、見事に一つの物語にしてしまった。
自分が今まで散歩をした道、そこで頭に残っている景色の一欠けら、散歩をした理由、そのときに何を感じたか、電車代ケチってテニスコートまで歩いた事、を断片的にだが思い出した。
もともと歩くのが好きな僕にとって、「歩きたい!」という意思が、この本を読むにつれて、2倍にも3倍にも膨れ上がった。読了後は、「歩きたい!」の飽和状態である。

「会話」、「コミュニケーション」が第二のポイント。
体力を温存しつつ、歩きながらするっていえば、会話でしょう。

なにげなく遊んだとりとめのない会話、主人公たちの捉え方が楽しい景色の会話、お互いを主語にする相互理解の会話や行動など、一つ一つ僕の中に積み重なっていった。
一人一人がたった二日間で、友人の助けをお互いに借りながら、自分の全てを出し尽くす。
曖昧の見本のような意見だが、それ以上「具体的にまとめる」という作業をするのをはばかられる本である。
上手くまとめられてあるのだ。


自分に彼らのような会話ができるのだろうか、という強い疑問を抱きつつも、結局単純にこう思った。
歩きながら話したい。それも長い行程をだ。

本書は文句なし。五つ星だ。

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2008年12月 6日 (土)

星々の悲しみ

上下フリースの服を着て、靴下を2枚履き、上には厚手のセーターを重ね着し、首にフリースを巻き、ひざかけを肩から後ろにかけ、一方腰には毛布を巻き、遠赤外線ヒーターで暖まりつつ、「寒い寒い」言いながら、日記書いております。

宮本輝「星々の悲しみ」ほぼ読了。

輝さんの小説では、急に人が亡くなる事がある。それも結構メイン人物がだ。

10ページ前までは、健康だったのに、そこから時間軸が加速するかのように数ページ進み、亡くなるのである。
あっという間の「ドン」とくる出来事である。

僕はその度に、予想だにしない「死」に戸惑い、驚きのあまり文章を読んでも理解する能力を失いかけることになる。

最近は病気や風邪の登場人物が出ると心配し、心構えをするようになってしまった。

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2008年12月 3日 (水)

容疑者Xの献身

石神「誰かに認められる必要はないのだ。…中略。論文を発表し,評価されたいという願望はある。だがそれは数学の本質ではない。誰が最初にその山に登ったかは重要だが,それは本人だけがわかっていればいいことだ。」

僕がパッっと瞬間的に気になった文章。
これは,実際に石神が話している文章では無いので,映画では言われてないかもしれない。
小説を読んで,「これ,いいな。」って思うところが人によって違うから,できれば小説で読んで終わっておきたい。映画も面白いと聞くけれど…・

さて。
なぜ,気になったかを考えた。
最近読んだ,似たような文章を思い出した。
福岡伸一「頂上に達した,一握りのノーベル賞受賞者の登攀経路は,すでにたくさんの人々によって拓かれていた。その人々はノーベル賞受賞者と同じくらいの,あるいはそれ以上の切実さをもって,自然の謎を知りたいと願ったものである。アンサング・ヒーロー(謳われることがなかった英雄たち)……略」

アンサング・ヒーロー。こういうの,いいな。

福岡さんは分子生物学者。
僕は理系人間(学校の学科で)。東野圭吾さんも大阪府大の理系卒でエンジニアとして勤務。
親しみがわいた。
東野圭吾さんの本,面白いと思った。

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2008年10月31日 (金)

10月の戦歴

僕の戦いの場は、主に電車だ。
電車内には永遠のライバルもいる。
睡魔だ。

睡魔に襲われた。
僕は逃げ出した。
しかし周りをかこまれて……なんてことは日常茶飯事だ。

そんな危険な闘いの場での、10月の戦歴を挙げよう。
夏目漱石「こころ」「三四郎」
草間、畑村さん「お金に学ぶ。(東大で教えた社会人学)
伊坂幸太郎「モダンタイムス」
茂木健一郎「脳を活かす仕事術」
の5冊。
夏目漱石さんは今「坊ちゃん」読書中。

次の二つの文章、
「春が二階から落ちてきた。」、「実家に忘れてきました。何を?勇気を」
また、次の二つの文章。
「吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生まれたか頓と見当がつかぬ。」、「親譲りのむてっぽうで子供の時から損ばかりしている。」

これは、伊坂幸太郎と、夏目漱石の小説の冒頭を書いたものである。
ユーモアという点において、良く似た空気を放っていないだろうか?
どことなく、似ていると僕は思う。

文豪、夏目漱石は小説で、当て字をするし、造語も書く。
これも、ユーモア。

夏目漱石を読む人へ。
今と、時代が違うから、夏目漱石がどういう時代に生まれ、どういう事を考えていたのか、を少し下調べしてから読むと、色々見えてきて楽しいですよ。俺はカンサンジュさんに夏目漱石を教わって、夏目漱石を読んでいます。

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2008年10月26日 (日)

モダンタイムス

モダンタイムス (Morning NOVELS)モダンタイムス (Morning NOVELS)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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最近は伊坂さんの小説が一番ってわけではないが、安定して好きなので今回もハードカバー買った。

読み終わって振り返ると、伊坂さんのこういう部分が好きなんだな、って感じた部分がある。
「魔王」からは、宮沢賢治の詩。「砂漠」からはサン・テグジュペリ「人間の土地」。今回、モダンタイムスからは、芥川龍之介ちゃん。などなど(パッっとでてこないw)。
これらは過去の有名な人(作家)、からの引用。そして、その作家の作品を読む足がかりともなり、作品の解釈のヒントにもなる。


芥川龍之介の言葉「危険思想とは、常識を実行に移そうとする思想である」。
この言葉を目にしても、「へ?龍之介ちゃん何言ってるの?」と私同様理解に困ったみなさん!この小説を最後まで読めば、理解できる(気がします笑)。


敵はあまりにも曖昧で、巨大。そんな圧倒的な敵に、どうやって立ち向かう。どうやって対決する。
未来では、実際にこういう事もあるのかもしれない、という漠然とした恐怖に、読み手である私の読書加速スイッチを押された。伊坂さんの突拍子もなく面白い設定(例…案山子がしゃべるとか、主人公は死神とか)の小説に比べると、現実的で重く、まじめだった。

チャップリン、芥川龍之介、アドルフ・アイヒマン、ヒトラーの話を、作中井坂幸太郎なる人物がしてくれるのだが、とても面白かった。この部分は、もう一度読みたいな。


読了後、「砂漠」の西嶋君が言っていた「目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか」という言葉が、思い出された。

あっ、重要な事を忘れていました。
「魔王」のお話の世界の50年後の話なので、「魔王」を読んでからの方が、モチロン面白いですよ。

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